響け!ユーフォニアムの一話
武田綾乃さんの小説シリーズ『響け!ユーフォニアム』を、京都アニメーションがアニメ化した一期と二期を観たので、簡単に思ったことを書こうと思います。本編内容に触れていますので、未視聴の方はお気をつけください。
冒頭から心に槍を刺された。
主人公、黄前久美子の回想シーンから始まる。中学生の吹奏楽コンクール結果発表の場面。久美子は中学3年生。演奏の評価は金、銀、銅というランクがつけられる。金賞を獲った学校が全国に駒を進めることができるが、全国大会に出場できる数には決められた枠がある。その枠にあふれてしまって全国大会に出場できないけれども、評価としては金賞を獲ったことを「ダメ金」と呼ぶ。いわゆる予選落ちだ。
結果、久美子の学校の吹奏楽部の演奏評価はダメ金になってしまった。大会に臨む多くの演奏者達は、コンクールの結果を祈るように待ち、歓喜や悔し涙の声を上げ、コンクール会場いっぱいに勝者の輝きと敗者の墜落の姿を残していく。しかし、久美子はそのどちらでもなく、大きな動揺も歓喜もなく、ただ平穏に金賞を噛みしめるように静かに喜んでいた。その隣で悔し涙をぼろぼろ流している、トランペット担当の高坂麗奈。久美子は麗奈に声をかける。
「高坂さん、泣くほど嬉しかったんだ。良かったね、金賞で」
「くやしい…悔しくって死にそう。なんでみんなダメ金なんかで喜べるの…。私ら全国目指してたんじゃないの」
「…本気で全国行けると思ってたの?」
久美子は思わずハッとした。これが久美子の癖だった。心の隅で思っていたことがふいにぽろっと口に出てしまう。それを聞いた高坂は泣き塞いでいた顔を上げて久美子の顔を見る。
「あんたは悔しくないわけ?あたしは悔しい。めちゃくちゃ悔しい」
高坂はそう言い放ち、会場から出て行った。
久美子の一言は、とても繊細な部分をなんの前触れもなく傷をえぐるようで衝撃的だった。集団で一つの目標に向かう部活動。同じ時間を過ごして、同じ曲を演奏するチームワークの集大成とも言える吹奏楽。その集団行動の中にいても、個人の持つ目標や意識は統一できず、バラバラに入り混じった集団を築いているものもある。私自身、吹奏楽部に入ったことはないけれど、友人を見ていて、集団に属して関係を築いていく大変さを話には聞いていた。多人数の人付き合いが苦手な私にとっては話に聞くだけでもその苦労を想像できた。
久美子の一言は吹奏楽に限ったことではない。同じ道を歩いていても、足並みが揃わないすれ違いはある。久美子と高坂には、それがコンクールでの結果に対するすれ違いになって現れた。久美子にとっては、あの一言が紛れもない本心だった。「本気で全国に行けるわけがない」と思っている久美子のすぐ隣に、「本気で全国に行きたかった」高坂という遥かな距離が空いた存在がいた。その高坂に一番届かせてはいけない言葉を放り投げた。そして高坂からは、久美子が心のどこかで思っていた気持ちを引っ張り出したのだと思う。
「あんたは悔しくないわけ?あたしはめちゃくちゃ悔しい」
悔しいと思うほど努力したことがあっただろうか。本当は悔しい気持ちがあったんじゃないか。久美子と高坂は高校でも吹奏楽部に入り、よきパートナーになる。『響けユーフォニアム!』は、久美子が周りの人に引っ張られながら、また周りの人に必要とされながら、成長を描いたアニメだった。
スピンオフ的な『リズと青い鳥』も素晴らしかったですし、新作の劇場版も公開予定です。楽しみです。
米津玄師さんのLemonを聴いて。
コーヒーの苦い美味しさは、大人になってからでないとわからない。いつ大人になったのかわからないまま、コーヒーは飲めるようになっていた。いつから飲めるようになっただろうか。苦くて飲めなかった自分はどこに行ったんだろうか。それとも、苦さや辛さに鈍感になっただけかもしれない。大人ってそんなもんだと納得してみたりする。
数ヶ月前に勤めていた前の会社にいた頃、米津玄師さんの「Lemon」を初めて聴いてから、中毒のようにリピート再生している。何故なのか自分でもよくわからない。久々にCDを買うほど、妙に耳に残る曲がLemonだった。
いい曲だと思った。好みの曲とは違うけれど、とにかく聴いていて飽きない。だんだん耳から離れなくなり、繰り返し繰り返し聴いた。
歌詞はどのフレーズを区切っても、大切な人が離れたことで寂しく思う気持ちや悲しいという気持ちがただひたすら言葉にされていた。その中で、レモンという単語やその存在感が妙に引っかかって今でも頭から離れない。
レモンは果物だけど、そのままで口にすることはあまりない。たいていは料理に添えられるもの。調味料として唐揚げにかけたり、生臭さを取ったりできる(詳しくないので料理の効果はググって欲しい)。アイスティーに添えたり、エスプレッソにレモン汁を数滴垂らせば、爽やかな酸味をプラスできる。レモンは見ているだけで唾液が出てくるけれど、主役にはなかなかなれない。添え物の脇役。
そのレモンが、この曲では不思議な存在感がある。
胸に残り離れない 苦いレモンの匂い
普段、レモンの匂いを能動的に嗅ぐことはあまりないし、どちらかというと、その強烈な酸っぱい味の方が印象に残る。アロマなどで香りを楽しむ目的のものもあるけれど、この曲では爽やかな香りではなく、「苦い」と歌っている。果実をそのままかじった時に、溢れる果汁と、果肉から染み出るわずかな苦味。皮はもちろん苦い。胸焼けするような酸味。
切り分けた果実の片方の様に
切り分けるというフレーズ。果物の皮から包丁を入れ、果肉に到達した時に弾ける果汁。レモンの皮のかたさと、果肉の感触。カットした時に弾けて鼻につく匂いと、包丁にまとわりつく果汁。細かな情景が思い浮かぶ。そんなイメージや映像が頭に貼りつく。
何故こんな歌を書いたのか。こうなると興味が湧くのが性分で、インタビューやら経歴やらを調べたくなる。ニコニコ動画で活動されていた名前は見ていたけど、あんまり曲は聴いたことがなかった。曲にもいろんな個性があって、当時はあまり好みのタイプではなかったんだと思う。
とあるラジオ番組で、米津さんがLemonについて話していた。詩人の茨木のり子さんという方の詩を読み、人が死ぬということをいろいろ考えながら作っていたそう。その最中に、祖父が亡くなられた。一回作っていたものを全てボツにして、新たに作り直さなければならなくなった。ドラマで流れる曲なのに、あなたが死んで悲しいというパーソナルなことを、4分間ひたすら歌うだけの曲で大丈夫なんだろうかと思ったそうだ。
身内のことになるけれど、今年、私の祖父も亡くなった。その数年前に祖母も亡くなった。祖母の時も祖父の時も実家から離れて、忙しい職場に勤めていて、数日休みをとって飛行機で帰り、葬儀に向かうということはできなかった。そんな時間も、お金の余裕も、心の余裕もなかった。亡くなった顔も見ていない。親は「今は仕方ない。その場所で頑張りなさい」と言った。祖母の時も、祖父の時も。悲しい気持ちに襲われなかったのは、仕事で疲弊していたからなのか、不思議と塞ぎ込まずにいられた。それでも、帰ることができた祖母の四十九日には悲しくなってしまった。入院していた祖父に会えた時は、祖父だとは思えないほど小さく車椅子に座っていて、ほかの患者さんかと思い廊下ですれ違ったほどだ。山登りが好きだった元気のいい祖父の面影はなかった。祖父は記憶も曖昧で、こちらから名乗らないと私が誰なのかがわからなくなっていた。
月並みな言い方だけれど、祖父がいなければ父も私もいなかった。戦時中を逃げて生きてくれた。ここまで世代を繋いでくれた大きな存在の祖父と、小さな添え物のレモン。どちらも忘れられない存在感を残していった。
切り分けた果実の片方の様に
まるで果物にも死があるかのように歌われるフレーズ。切り分けられた命。どちらか片方は生きていて、もう片方は死に分けられるのだろうか。それとも両方の輝きが失われるのか。しかし、果実の甘さも魅力も、その苦さも、果肉の輝きも。切り分けないと見えない。
雨が降り止むまでは帰れない
今でもあなたは私の光
雲間から差し込む光をあなただと思い、しかし晴れるのを待たないと帰ることができない弱さ。そばにいなくても信じて前を向けるのは、あなたが光になってくれるから。生きる理由になる。
前の職場で疲労困憊。ヘトヘトになった時、余ったレモンの切れ端を見つけた。疲れた脳には糖分が必要だけど、体が疲れた時には酸味が必要だ。その時は猛烈に体が酸味を求めていた。輪切りにしたレモンを迷わず口に放り込んだ。酸っぱさで顔をぐしゃぐしゃにして、歌詞にあったレモンの匂いはこれか、などと思いながら、苦みを探した。舌がピリピリする。見つける前に、体の血管中を巡るように染み込んでいった。かじったレモンの味は、苦さも含めて、心の底からおいしいと思った。
ピアノと音楽を学びたい人にオススメの12冊
ピアノを弾くことを仕事にしている方、ピアノに関わる音楽関係の仕事をしている方。「これからは演奏や芸術的な技能だけじゃなく、基礎知識を強化したい」と思っている方。またはこれから音楽について学びたい、教養を身につけたいと思っている方にオススメの12冊を紹介します!
これを読めば演奏技術が向上する、ノウハウが学べるといった本を紹介するわけではないことをご了承ください。
紹介した本が、音楽や演奏に付随する教養と経験、想像力の助けになれたなら幸いです。
それではさっそくいきましょう!
- 『ピアノの誕生』西原稔(ピアノの歴史)
- 『西洋音楽史』岡田暁生(音楽の歴史)
- 『音楽嗜好症』オリヴァー・サックス(音楽と脳の関係)
- 『響きの科学』ジョン・パウエル(音響物理学、音響心理学)
- 『永遠のピアノ』シュ・シャオメイ(ピアニスト自伝、歴史)
- 『芸術とは何か 千住博が答える147の質問』千住博(芸術論)
- 『ドラッカーとオーケストラの組織論』山岸淳子(音楽マネジメント)
- 『名曲誕生 時代が生んだクラシック音楽』小宮正安(歴史、音楽背景)
- 『さよならドビュッシー』中山七里(音楽ミステリー)
- 『のだめカンタービレ』二ノ宮知子(音楽漫画)
- 『ピアノのムシ』荒川三喜夫(ピアノ調律師、ピアノ業界)
- 『パリ左岸のピアノ工房』T.E.カーハート(ノンフィクション)
『ピアノの誕生』 西原稔
内容:ピアノの歴史について。ピアノが生まれてから300年の時が経ちました。音楽の歴史の中では短いものですが、ピアノが辿った歴史がぎゅっと詰まった一冊です。ピアノはどのように発展し、人々の中に浸透していったのか。ヨーロッパと日本の歴史を追って書かれています。文化、社会、産業革命、大衆化、教育、趣向品としてなど、様々な経過を辿り、ピアノが今の私たちの生活にどんな距離感で存在するようになったかを知ることができます。
『西洋音楽史』 岡田暁生
内容:音楽の歴史について。今私たちが耳にしている音楽は、西洋(ヨーロッパ)の音楽理論によって構成されたメロディや和音による音楽が、日本に取り入れられ、浸透しています。その音楽がどのようにして生まれたのか。バロック、古典、ロマンなどの音楽形態はどのように変化し、人々に浸透し、定義されるのか。音楽が生まれ変化した時代は、歴史の中でどんな位置にいたのかを、本書では論じています。西洋音楽史の本は数多く出版されていますが、岡田暁生さんの著書はとてもわかりやすく書かれていると思います。西洋音楽の歴史の大まかな流れが理解できる一冊となっています。
→合わせて読むと理解が深まる本。Step Up!
音楽と思想・芸術・社会を解く 音楽史 17の視座―古代ギリシャから小室哲哉まで
- 作者: 田村和紀夫,鳴海史生
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1998/03/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『音楽嗜好症』 オリバー・サックス
音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: オリヴァー・サックス,大田直子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/08/22
- メディア: 文庫
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内容:音楽と脳の関係。脳神経科医のオリバー・サックス先生が、音楽と脳の関係について、患者から観察した不思議な症例を書き記した一冊。
スティーブン・ピンカーというアメリカの心理学者が言った「音楽は聴覚のチーズケーキである」という言葉があるそうです。音楽とはチーズケーキのような趣向品と同じで、人類から失われたとしてもその後の進化には影響しないだろうという意味の発言だそうです。では実際、私たちが耳で聴いた音楽は脳でどのように処理され、私たちの行動に繋がっているのでしょうか。
本書に登場する、脳に疾患を抱えた患者たちの音楽に対する反応から音楽の関わりが見えてきます。以前ドラマにもなった、「サヴァン」がわかりやすい例でしょうか。本書に登場する症例では、言葉がうまく話せなくても、歌の歌詞は暗唱できる。記憶がわずかしか持たなくても、バッハのピアノ曲を何曲も弾くことができるなどなど。ある能力の欠けた部分を、他の能力が秀でることで補おうとする。作曲家ラヴェルは、「ボレロ」を作曲した当時、それまでの作曲した構造と違い、単純なリズムとメロディを反復する認知症だったのではという話も。
音楽と人間の脳との関わりについて、面白い側面を発見できる一冊だと思います。
『響きの科学』ジョン・パウエル
響きの科学―名曲の秘密から絶対音感まで (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ジョンパウエル,John Powell,小野木明恵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/08/05
- メディア: 文庫
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内容:音の成り立ちについて。物理や心理学という難しそうなテーマになりましたが、本書は堅苦しくなく、ユーモアに溢れた語り口となっていてとても楽しく読めるはずです。音と雑音の違いは?ハーモニーってなに?短調は何故暗い響きなの?音と音楽についての素朴な疑問がわかりやすく解説されています。読み終える頃には、自然と物理学や心理学を通して、あらためて音楽の感動を再認識できると思います。音楽と科学(ひいては数学)はかけ離れたものではないんですね。
→気になったらこちらもぜひ。
絶対音感神話: 科学で解き明かすほんとうの姿 (DOJIN選書)
- 作者: 宮崎謙一
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2014/07/10
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『永遠のピアノ』シュ・シャオメイ
永遠のピアノ〜毛沢東の収容所からバッハの演奏家へ ある女性の壮絶な運命〜
- 作者: シュ・シャオメイ,槌賀七代,大湾宗定,後藤直樹,阪口勝弘,釣馨
- 出版社/メーカー: 芸術新聞社
- 発売日: 2015/04/25
- メディア: 単行本
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内容:文化大革命を経験したピアニストの自伝。中国の女性ピアニストが音楽学院に通っていた頃に文化大革命が起こり、音楽活動を中断せざるを得なくなる。しかし、ピアニストになる情熱を絶やさず、アメリカやパリに渡り、40歳にしてプロの演奏家になったシュ・シャオメイ。
文化大革命については文献も少なく、全容について明確な記録も残らないほど混沌とした出来事だったようです。まして芸術家がどのように生きたかを記したものなど、残るはずもない中で、このような本が書かれたことはとても価値があります。
正式には1966年5月に開始された文化大革命。毛沢東が共産主義を推し進める革命が民衆を扇動しました。資本主義を進める西洋の考えは危険で、その文化(音楽や文学など)を行うことも所持することも同様に罪であるとし、絵画、書物、バッハ、ベートーベンなどの作曲家のたくさんの楽譜やレコードが燃やされ破壊されました。芸術の職につく人も大勢収容所に送られました。この革命での死者は数百万から数千万人とされ、正確な人数はわかっていないそうです。
すぐ隣の国で、半世紀前にこのような出来事があったことがとても恐ろしいと思いました。このような悲惨な状況でも、音楽を辞めなかった。むしろ過酷な状況でこそ音楽や芸術が力を発揮するのだと感じました。当時のシュ・シャオメイを支えていたのは音楽、ピアノと文学でした。もちろんそれらは、ブルジョワ文学として批判されていましたが。ここに挙げると、トルストイ(アンナ・カレーニナ)、チェーホフ、ドストエフスキー、プーシキン、ロマン・ロラン(ジャン・クリストフ)、バルザック、フロベール、ゾラ、マリー・キュリー、老子、荘子、ロダン(芸術論)、ヴィクトル・ユゴー、ハンナ・アーレントなどなど。
毛沢東は芸術、特に音楽が人にもたらす力の強大さを知っていたのだという。それ故に危険視していたのだそうです。余談ですが、もう二度と同じことが起こらないよう、文化大革命の教訓から考えて、学ばなければいけないですね。
- アーティスト: シュ・シャオメイ,J.S.バッハ,シュ・シャオメイ(ピアノ)
- 出版社/メーカー: MIRARE / King International
- 発売日: 2012/07/10
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『芸術とは何か』千住博
内容:芸術について。著者の千住さんは美術や絵画専門の方ですが、芸術について寄せられた質問に答える形式の本書で答えられたことは、音楽にも通じる部分があると思います。
「芸術家は時代と共に生きるのですか?時代から超越しているのですか?」「芸術家にも市民感覚、市民的常識は必要ですか?」「芸術に無関心、無関係な人生は無意味ですか?」などなど、きわどい質問もいくつかあり、それらに端的に答えてらっしゃいました。読んでいて面白かったです。
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音楽の感動を科学する ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス"になったのか (DOJIN選書35)
- 作者: 福井一
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2010/10/01
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『ドラッカーとオーケストラの組織論』山岸淳子
内容:組織としてのオーケストラマネジメントについて。『マネジメント』の著者ドラッカーは『マネジメント』の中で、「経営管理者はオーケストラの指揮者である」と例えたそうです。そこからヒントを得て書かれた本書。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』のオーケストラ版でしょうか。音楽の顧客は誰か。オーケストラの価値を信じているかなどなど、音楽をビジネスにしていく方には、この本が役に立つのではないでしょうか(私はあまり詳しくなくてすみません…)。
→こちらももちろんおすすめ。
- 作者: ピーター・F・ドラッカー,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/12/14
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『名曲誕生』小宮正安
内容:クラシック音楽の名曲の歴史背景について。クラシック音楽の名曲はいかにして名曲になったのか。メロディが美しい、構成が素晴らしいだけでなく、歴史や時代を映し出す鏡として長く人に聴かれ続けた曲が、名曲となり得たとして、丁寧に解説されています。
『さよならドビュッシー』中山七里
内容:映画化されましたが、これは原作の小説をおすすめします。ジャンルや作風は音楽ミステリーなのですが、主人公の周りにいる人、ピアノの先生や医者、祖父が語る精神論。コンクールを目指す練習風景やピアニストとしての姿勢はまるでスポ根を見ているかのように熱いです。「二本の足で立って前を見ろ。自分の不幸や周りの環境を失敗の言い訳にしたらあかん」、「ベートーヴェンは難聴の作曲家だから偉人になったわけではない」などなど。理屈で励まされ、背中を押される言葉が多かったように思います。
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『のだめカンタービレ』二ノ宮知子
内容:言わずと知れた音楽漫画ですね。これはアニメとドラマもありますので、どんな曲が演奏されているのかを実際に聴いて楽しむこともできます。主人公の音大の四年間と、フランスに渡りピアニストとしての演奏活動を描いていて、その周りにいる愉快なキャラクターたちが音楽に奮闘しながら日々を送っていきます。音楽人生だけじゃなく、その日常生活も色鮮やかに描いていて、人生の中で音楽の道を選んで続けていくことや、選択の岐路を前に、音楽がどのように寄り添って影響を与えているかが丁寧に書かれています。あの時、あのキャラクターが悩んでいた時はこんな曲を練習していたなとか、華々しい瞬間を迎えた時にはあの曲が演奏されていたなとか。クラシック曲の背景とキャラクターの心境や環境がマッチしていて、音楽が心を語るようなシーンが多くとても印象的です。「ぎゃぼー!」と叫ぶ主人公のモデルは、作者の周りに現実にいた女性をモデルにしたそうですね笑 音大には個性的な人ばかりいるわけではないことを重ねて断言したいですが(擁護)、群から際立って目立つ人もいるので、空気だけでも楽しんでいただけると思います。
『ピアノのムシ』荒川三喜夫
内容:ピアノ調律師とピアノ業界の現状。ピアノの音の調子を整えてたり、内部の機構の動きを直したり、壊れた箇所を修理したり。ピアノの裏方として働くピアノ調律師とはどんな仕事なんだろうかという興味を持った方はおススメです。この漫画の魅力は、ピアノ調律師の業界、または関連するピアノ業界の現状と真正面から向き合い、そこに居座る数々の問題を、口が悪いが腕利きの調律師が改善するというお話。中にはすっかり解決に向かわない話もあります。同業者の方なら共感できるテーマや問題がこの多く登場します。多少誇張もあるでしょうが、無視できない事柄ばかりだと思います。
調律師と詐欺師は紙一重だ。
友人はこの言葉を読んで「この作者は調律師が嫌いなのか?」と非難してましたが、言い得て妙だと私は思いました。
ピアノという楽器は、演奏者自身がメンテナンスやチューニングをしない楽器です。ピアノの内部には何千個もの部品が組み付けられていて、その一つ一つがミリ単位で調整されています。木材、フェルト、鉄など複数の素材が混合し、その調整や調律には技術が必要です。それがピアノ調律師という職業として成り立っているほど、演奏技術の向上と楽器調整の技術を同時に身につけていける代物ではないのですね。つまり、ピアニストでもピアノの中身に詳しい人はあまり多くないという事実です。その無知に漬け込んで、調律師側から、今のピアノはここが問題で最低限ここは直したほうがいいとアドバイスをされても理解が及ばないことがあります。技術を提供する側と受ける側双方に差異があるまま、そこに使われる技術にどれだけの価値を払うべきか相互の理解に繋がっていないのです。ともすると詐欺行為になりかねない状態ですね。
なかなか深刻なテーマにも思えますが、漫画はそんな状況を痛快に切り抜けていくのでとても面白いです。同じく調律師を主人公にした『羊と鋼の森』とは切り口が違いますのでお気をつけください笑 興味がある方はぜひ!
『パリ左岸のピアノ工房』T・E・カーハート
- 作者: T.E.カーハート,Thad E. Carhart,村松潔
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/11/01
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内容:ピアノを見つめる目。フランスの裏通りにある小さな店構えのピアノ修理屋。店内にはピアノの部品や修理工具が並んでいるが、狭い店の奥にはアトリエがあり、さまざまな年代の、さまざまなメーカーのピアノが何十台も並んでいます。スタインウェイ、ヤマハ、エラール、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、ファツィオリ……。修理中であったり、修理後に音を復活させたピアノも並んでいます。その工房を営んでいるピアノ職人リュックは、ピアノ一台一台の個性を知り、またその声を聞く。ピアノの声を聞くというのは比喩ではなく、本当にそのピアノの持つ素材としての音を聞いて、愛している。
資本主義の世の中、会社としてピアノを作り、売れるためには「利益」や「効率」が優先される現代で、この工房は時流に流されず、世界の片隅でゆったりとした時間を保ち続けています。ピアノに使われた木材がどこからやってきたのか、このピアノはどんな生涯を歩んできたのかを我が子の思い出を語るように話をするリュック。その心と言葉がとても美しい。
このような姿勢でピアノに向き合うことはとても難しいです。日本では絶対にありえない。望んでも手に入らない精神と姿勢があります。失ってしまった職人の息づかいが残されている場所。現代の中では「淀み」のような空間であり、それがいかに尊いものであるかは、立ち止まらないとわかりません。この本にはそんなリュックの、ひっそりと輝く光のような言葉が美しく紡がれています。フランス、パリのどこかにある工房が、ピアノの声を聞き、音楽のために作られ生まれたピアノの個性が子供のように愛され理解されて、いきいきと鳴り響き続けますように。珠玉の一冊です。
おわりに。
興味のある本はありましたでしょうか。紹介した12冊が、音楽への理解を一つでも近づけ、音楽生活の役に立てたなら幸いです。ピアノの歴史は300年。西洋音楽の歴史は500年。西洋音楽の理論が生まれたのは紀元前500年頃から。そしてその理論の元になったのは、人が生まれるはるか昔、138億年前に誕生した宇宙だというのですから規模が大きすぎますね…。
本を読み重ねていくと、宇宙と音楽を繋ぐものは数学にあり、数の調和が音楽のハーモニーを作り上げていると考えられていることがわかるかと思います。音楽の感動は聴いた時に感じるものだけでなく、数という変わらない秩序の上にも成り立っているのです。数学の勉強は退屈で難しく感じる方もいらっしゃると思います。私もその一人です。 しかし、音楽の美しさは数学によって構築されていると知っても音楽の感動が薄れてしまうことはないのではないかと思います。
話が戻りますが、歴史が進み続ける先端、今を生きている私たちは過去から学ぶしかないわけですね。私もまだ半世紀も生きてませんし、100年経たずに死んでしまうことは確実ですから。1人の生涯は微々たるものです。なので、先人の方々が研究してくれたさまざまな分野の知識を学び、その言葉を読むことができるのは、残してくれた本があるから。そんな過去から繋がりを絶やさずに、伸びてきた道の上に私たちはいるんだなぁと実感し、また私たちがその道を先の世代に繋いでいけたらいいですね。
音楽に迫る本をきっかけに、人生が芸術に溢れ、日々を彩りますように。では、また!
より興味が沸いた方へオススメの本。
- 作者: チャールズ・ローゼン,朝倉和子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2009/09/19
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歌詞解釈、コード解説『灯台』黒木渚
『灯台』 作詞・作曲・歌/黒木渚
ミュージシャン、黒木渚さんの圧倒的な魅力は歌詞です。ご本人曰く、
「私のルーツは音楽ではなく文学だ」
とインタビューに答えるほど。音楽活動の傍ら、小説も何編か書いていらっしゃいます。
今回は、個人的に名曲だと思っている『灯台』という曲の歌詞解釈とコード解説を書いていこうと思います。
※以下に書かれた解釈は、個人的な解釈であり、制作者の意図とは関係ありませんのでご了承ください。また、楽曲のコードは公式に楽譜として出版されたものではありませんので、公表や転載はご遠慮ください。
【歌詞解釈】
視点の大移動。
今回紹介する『灯台』という曲は、"私"を視点にして"私"が大切に思っている"あなた"を"灯台"に例え、"あなた"への憧れや恋の気持ちを歌った曲だと思っています。この曲を聴いて私は、大学生の頃の気持ちを思い出しました。まるで深夜にヘッドフォンでラブソングを聴きながらラブレターをしたためて朝には猛烈な痛さに襲われるようなあの頃の気持ちです。このブログも深夜に書きました(やめろ)。
歌詞は"私"と"あなた"(灯台)がメインで登場し、2人の関係と"私"の気持ちが表現、展開されていきます。スローバラードな曲調ですが、登場人物の視点がスピード感を持って次々に変化する描写は、歌詞がこの曲に抑揚をつけている最大の特徴になっています。
では、1番。Aメロの1フレーズ。
遠くから見るあなたって 凛とそびえる灯台
冒頭から"私"という視点から"あなた"をどのように見ているか、そして2人の距離感が表されています。暗い夜、"私"は広い海に漂っていて、"あなた"がとても遠くに光となって見えているという情景が浮かび、そして互いの距離感が伝わってきます。"あなた"は"私"にとって近づきたい対象であり、右も左もわからない暗い海では唯一目印になってくれる灯台に例え、拠り所のような重要な存在を象徴しています。次のフレーズへ。
「こっちへおいで」 強い光で示しているの
「呼ばれればどこへでもついていきたい」まさに拠り所としているのは"あなた"のこと。続くAメロのフレーズ。
足元を何度も回って見上げてみると あなたは誰に光を届けているの?
ここで視点が一気に灯台の真下へ移動しています。冒頭では海から対岸に見える、遠い灯台の光を見つめる視点でしたが、このフレーズで灯台の足元から光を見つめる視点の変化があります。"私"が"あなた"との距離を伺って、時に友達のように気軽に離れたり、時には恋人のように近づいたりする様子とも捉えることができるでしょう。そんな不安定な心の揺らぎの中で、ふと近づいて見つめると"あなた"の視線の先が気になってきます。Bメロへ。
水平線の向こうで迷える私のこと
ここでまた視点が変わります。これは灯台に例えた"あなた"からの視点。水平線とは空と海の境界線のことですが、実際にその境界線が海と空の間に目に見えて引かれているわけでありませんね。空と海が見渡せる距離に立って、海の沖に見える空との境が水平線であって、近く目の前に見えるわけではなく、必ず距離を持って遠くに見えるのですね。"私"が海にいたとして、その"私"から見える水平線は"私"が居る位置からはさらに遠くのことを指すことになります。しかもここでは-水平線の向こう-と歌われていますから、"私"が海にいても灯台の真下にいても"私"の視点から「水平線の向こうで迷える私」と歌うことはできません。それができるのは灯台になっている"あなた"か、"読み手"が視点になっている時だけです。
"あなた"は灯台のように高い所から水平線を見渡すことができます。その水平線のさらに向こう側に"私"が見えるということですね。そしてその"私"は行く先を迷っています。
余談になりますが、ここでもう一つ面白いのはメロディです。-水平線-の部分はすべて同じ音で歌われています。すーい・へーい・せーんと同じ音が3つで歌われて、お経のように単調に聴こえますが、その直線のようなメロディで水平線を表していると捉えることもできます。また、ここではⅣM7というコードが演奏されています。和音を構成する音に、主音の半音下の音が含まれているコードです。鍵盤や楽譜を想像していただくと、この半音下というのは、ドとシと同じ関係の音程なので、鍵盤で隣同士に弾くと、不協和で濁って聴こえます。ここで歌われている音は、ちょうどこのシにあたる不協和な音になっています。つまり、-水平線-と、直線的なメロディを歌っておきながら、音に揺らぎがあり、それが後の歌詞にある-迷える私-という不安な気持ちを表していると捉えることもできます。続く、-の向こうで-というフレーズでは、直前の直線のメロディから上昇するメロディを裏声(ファルセット)で歌い、駆けあがったメロディが、楽譜に書いてみてもわかると思うのですが、山なりの放物線を描いて下降して着地する形のフレーズになっています。まさに乗り越えるような形に見えます。楽譜に書き起こしてみると、目で見えるメロディの形もまさに、-水平線の向こう-になっているのですね。
話を歌詞に戻します。行き先を迷っている"私"。視点が"私"に変わり、
導いてくれたなら 真っ直ぐに君のいる港へ
この曲の歌詞に"君"が登場するのは、このフレーズたった一度だけです。"あなた"を"君"に言い換えただけなのでしょうか。それとも、"あなた"から"私"を呼ぶ時の呼び方なのでしょうか。もしかすると"私"は海ではなく、水平線の向こう、灯台からは対岸の港にいると言えるかもしれません。灯台の光は約30km先まで届くそうです。灯台の光が見える距離の対岸があってもおかしくはないのではないでしょうか。このフレーズで"あなた"は灯台の真っ直ぐな光になって、対岸にいる"私"に会いに行くと言っているのかもしれない。しかし、これまでの歌詞から見て、導かれているのは迷っている"私"なのですから、"君"は"あなた"の言い換えなのだというところにとりあえず落ち着こうと思います。
そうして"私"は灯台のような"あなた"に導かれて、暗い海の上でその光を目印にし、憧れの人のもとへ近づこうと港へ向かいます。しかし、"私"がそう決意した時には、もう朝がやって来る時間になっていたのです…。この後で壮大なサビが歌われます。ぜひ楽曲を聴いてみてください。
Aメロ、Bメロだけで視点が次々に変化する動きがあり、とても面白い歌詞だと思いました。視点の移動がサビを歌うまでに3回も行われています。歌詞の言葉数も多いわけではありません。この表現は小説でもできない、歌ならではの表現になっていると感じました。聴き手、読み手である私たちの視点が、曲を聴いているうちに、海→灯台の足元→灯台→海という大移動を瞬時に行なっています。少ない言葉でこの歌の世界の風景を緻密に想像させることができているのです。全体を通して主語は多いが、登場人物は少なく、「私がこうした」「あなたはこう言った」という、主語中心であえて語らない。言葉をシンプルにして伝える言葉選びはとても魅力的だと感じました。
【コード解説】
コード進行の解説に移ります。サビの途中まで有名なパッヘルベル作曲『カノン』のコード進行が使われます。
Ⅰ-Ⅴ-Ⅵm-ⅢmーⅣ-Ⅰ-Ⅳ
聴き慣れた伴奏であるだけに、メロディも聴き慣れたものになりがちですが、そこはミュージシャンの腕の見せ所で、この曲はとてもメロディに無駄がなくゆったりとした歌を聴かせてくれます。さらにこの曲にもっとも劇的な変化を与えているのはこの後と、サビ直前のコードです。
J-POPでは主和音に向かって進行するコードとしてよく使われます。主和音の調の、同主調の平行調。移調した調のⅣ(サブドミナント)とⅤ(ドミナント)として、サビ直前で初めて登場します。主和音がCだとすると、同主調(Cm)の平行調(E♭)のⅣ(A♭)とⅤ(B♭)です。このコード進行が曲の雰囲気をガラっとドラマチックにさせ、サビへと盛り上がっていきます。
※同主調転調というこのコード進行は、様々な楽曲に使われていて、同主調マイナーのⅣ→Ⅴ→Ⅰに進行すると思いきや、Ⅵmの同主調(マイナーからメジャー)へと変化し、独特な展開を見せます。同時に終止感を感じることのできる便利すぎて頭が上がらないコード進行、秘密兵器でもあります。※
曲全体としては素朴なコード進行なのですが、素朴が故にメロディで余計なことはできず、無駄があると目立ってしまう。それでもスローなテンポにしっとりとしたメロディを聴かせてくれる、繊細で洗練された一曲になっています。
CD音源はバンドサウンドなのですが、Youtubeにある本人のライブ映像では、ピアノ伴奏のみで演奏され、それが曲にマッチしていて、思わず聴き入ってしまい好きになりました。
『解放区の旅』のシングルのカップリングに収録され、itunesでも配信されています。ぜひ聴いてみてください。
ライブ映像。黒木渚「灯台」国際フォーラムホールC 2016.06.03(Live/Encore) - YouTube
あぁ。私の灯台はどこに…。
ではまた!
小説『二十世紀電氣目録』感想
あらすじを読んで、物語のテーマにとても惹かれるものがあったので読みました。
時代の移り変わり。
舞台は明治時代の日本。
電気の発明により、技術に革新的な変化が起き、電気を動力にした製品が数多く作られ、人々の生活がこれからどんどん便利になるのではないかと囁かれ始めた頃。
神仏など、どんなものでもたやすく信じてしまう少女。「これからは電気世紀だ!」と謳い、人のために便利な電気製品を作って、電気で極楽浄土を作るという夢をもつ少年。
まるでドラえもんのひみつ道具のような、未来への夢が詰まった電気製品を20個書き記したのが「電氣目録」。
とある秘密の記述が書かれているという電氣目録を巡るミステリーと、この2人の恋物語でもあるが、考え方の違いから喧嘩したり、寄り添ったり。
その様子がとても眩しく、瑞々しい。
見えないものを信じること。
目に見えない神様を信じることと、同じく動力源の見えない電気を信じることにどんな違いがあるだろうか。
そんな問いが、小説の中で度々、会話に登場します。
テクノロジーが発達して、科学を信仰し、人が得たものと失ったものはなんだろうか。
新しい時代が始まるという期待感と、それによってなくなっていくものが同居する時代の変わり目に、人の心はどんな風に変化するのか…こういう話に弱いです…。
実際、当時の日本はどうだったのか。興味があるのですがまだ勉強できてません。
ともすると時代錯誤と言われそうなテーマの小説ですが、今の私たちにも通じるものがあるんじゃないかなぁと思います。
これから迎える2020年。
東京オリンピックと共に、特に東京の街は大きく変化するでしょう。
自動運転の自動車が街を走るだろうとか。
AIが人間の代わりに仕事をこなし、人の労働負担はさらに減るだろうとか。
VR空間で会議を行ったりなど。
先のことを考えても、本当に何が起こるかなんて誰にもわからないので心配してもしょうがないのですが。
目に見えるものしか信じないというのはもっともらしいですが、実は隙があって。こうして操作しているスマートフォンだって、中で何が起きているかは直接見たことがないのに、ボタンを押せばアプリが起動する。何故かはわからないけど電話で話すことができる。と、信じているわけですよね。
はたまた、空気も、この心臓も直接目に見えないのに、呼吸して生きているわけですから、信じる対象というのは、信じる気持ちがあればなんだっていいと思います。
同時に、自分が本当にわかっていることなんてごくわずかで、神秘としか言いようのないものばかりなんじゃないかと思ったり。わからないもののために学問があり、わからないから学んでいるんでしょうけれど。わからないものをわからないと放っておいても、あとでわかる時が来るから、今調べて無理にわかる必要なんてない。なんて思ったりもします。
どうやら京都アニメーションでアニメ化がされるそうなので、とても楽しみにしています。興味がある方はぜひ。
小説の中に、日本の文化を感じる衣類や生活品が多く登場したので、あらためていろいろ調べながら読み進めました。その中の一つ、「水口細工」。
「幻の葛細工」が消えた意外な理由(田中淳夫) - 個人 - Yahoo!ニュース
耳コピコード進行解説『エコー』
『エコー』
歌:初音ミク
作詞:絵師じゃないKEI(ハヤシケイ)
作曲:絵師じゃないKEI(ハヤシケイ)
(2010年)
Key=G
◎リズミカルなドラマのタムに、歪んだ長いストロークのギターと細かなストロークのギター。伸びやかな初音ミクの声がマッチしていて、まさにエコー(こだま、反響)しているような奥行きのある響きが感じられる爽やかな一曲です。歌詞もよく、ファンの中でも長く愛される曲となっていると思います。
◇イントロ
G|Bm|C|D
◇Aメロ
G|Bm|C|D
C|Bm|Am|D
◇Bメロ
Em|Bm|C|G D/F#
Em|A7|C|D
◇サビ
G|Bm|C|D B7
Em|Bm|C|D
G|Bm|C|D B7
Em|Bm|C|D
◇2番Aメロ
G|Bm|C|D
C|Bm|Am|D
◇2番Bメロ
Em|Bm|C|G D/F#
Em|A7|C|D
◇2番サビ
G|Bm|C|D B7
Em|Bm|C|D
G|Bm|C|D B7
Em|Bm|C|D
◇Cメロ
CM7|CM7|Em|Em|D|D|Em|Em
CM7|CM7|Em|Em|D|D|C|D
◇間奏
CM7|CM7|Em|Em|D|D|C|D
◇3番サビ
G|Bm|C|D B7
Em|Bm|C|D
G|Bm|C|D B7
Em|Bm|C|D
Em|D/F#|G|A7
C|Bm|Am|D
G|Bm|C|D(繰り返してフェードアウト)
◎ハヤシケイさんの手癖なのか、KeyがG(ト長調)の曲が多いです。コブクロのお二人もこの調を多く使う印象があります。ギターで演奏すると、この調のコードは開放弦が多いので比較的演奏しやすく、付属のコード(M7やsus4)などのバリエーションも組みやすいので、おそらく普段からギターで作曲されていて、この調を多用されているのかなぁと思います。
実際にギターで弾くと、響きがとても気持ちいい調です。ロックな曲調にもよく使われます。
☆この曲の注目したいところはただ一つです。
3番サビの1フレーズ。
Em|D/F#|G|A7
(Ⅵm→Ⅴ→Ⅰ→Ⅱ7)
最後のサビで唯一登場する進行。
これは絶対に決めておきたい必殺技、唯一無二の一球なり!です。
このフレーズを実際に聴くと、EmからA7に向かって音が上昇しているように聴こえます。
気持ちも盛り上がる効果的な進行です。
Em→DはⅥ→Ⅴへ低下するコードなのですが、Dの構成音レ-ファ#-ラを転回させてファ#-ラ-レとし、ファ#の音をベースの音にすることで、Emのベース音であるミの音からファ#へ、上昇するように聴こえる進行に変化します。
Em→Dがスムーズに繋がったら、続きのベース音は、
E→F#→G→A
(ミ→ファ#→ソ→ラ)
という流れが見えてきます。
ギターで弾く時は、D/F#の分数コードで、ベース音のF#を確実に鳴らすことです。
この進行が来たら、心拍数ボルテージ上がりまくりキタ(゜∀゜)キタ(゜∀゜)状態でメーター振り切って超気持ちいい。なんも言えねぇ。ですので(変態はほっといて)、ぜひバッチリかっこよく決めてください。
◎KEIさんの楽曲で一番有名?な『ピエロ』という心暖まる曲や、メロコアなギターサウンドがありながら、歌詞は圧倒的な前向きさをもって聴く人を引っ張るわけでもなく、少しひねた弱気な歌詞。そこに、同じ目線に立ってくれるような優しくて鋭い言葉の魅力があるなぁと思います。
個人的には『そばにいて』『dialogue』『HERE』『約束ノート』『Doomsday Clock』『向日葵と山茶花』が好きな曲です。
「エコー」 - KEI feat.初音ミク - ニコニコ動画
小説『Self-Reference ENGINE』円城塔
わけがわからないが面白かった。
『屍者の帝国』を積読し、同著者の『これはペンです』もいまいち理解できず、英訳がフィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞した本書を読んだ。
恥ずかしながらまだSF小説を数多く読んだこともなく、有名なディックの小説も未読だけど、海外に評価された作品ならきっと理解できて面白いのだろうというミーハー精神で読み始めた(ディストピア小説は大好き)。
やっぱりわけがわからなかった。
でもこの本は面白かった。
内容は言語や時間、タイムトラベルなどを扱っていてSFしていたのだけど、言葉に注目すると口癖のように言葉遊びが散りばめられている。純粋に文字たるもの、言葉たるものを追及した文学してると思う文章。
読む側としては、わからなさすぎてただの文字列を追っているような感覚になるし、それがただ文字を読む快楽を浴びているような詩的な文章にも感じる。
わからないなりにも読み続けられたのは、この本が20の短編から長編を成していたから。
各々の短編はまったく繋がりの感じられない、突拍子もない展開やイベントが起こる。そのイベントで起きていることはまだ理解できる範囲だし、共通の登場人物も出てくるが、結局それがどこに収束するのか、何に向かっているのかは難解なものになっている。
しかし結末で明らかになる繋がりや超越したような展開は爽快感がある。
それでもやはり、これもまたなんだかわからない。
「存在するが存在しない」
という論が繰り広げられる。
具体的な対象が描かれてストーリーが繋がるのでなく、ぼんやりとしたイメージや想像がゆるやかに全体を繋いでいるような。
とりあえず読んでみてくださいとしか言えません。読めばわかる。
結末を読むまでは、「本」という媒体自身が知性を持って自己認識をしている話なのかな?と思ったけど違うみたい。
フィクションがフィクション自身とは何であるかを問いかけるSelf Reference ENGINE(=自己参照機構)。
結局なんだかわけがわからないままにこの感想も終わる。