まじめ道楽

観たもの、聴いたもの、読んだもので生きる

銀河鉄道

夢を見ているのか、夢から覚めたのか。

夜の街を歩いている。ふわふわした頭が現実を遠ざける。水面に映るような揺らめく足元。

アルコールはだめだ。明日も仕事なんだ。正気を保とうとしながら、視線を上に飛ばすと、真っ黒な夜空にちらちらと星が瞬いている。酔っているせいか。本当の星の光の揺らめきなのか。会話が遠ざかって、孤独な宇宙にいるようだった。

帰りの電車にさ迷い座り込む。先輩と上司が笑いながら話している。声はぼんやりした思考にかき消される。先輩と上司の姿は瞼の中に消されていく。

窓の外の暗闇に、通り過ぎていく街灯や窓の明かり。それらは流星群のように、電車の窓から窓へ滑り出す。

赤、白、黄色。白、青、黄色。

僕は銀河鉄道に乗っている。温かな家へ向かって走っているのだ。光の粒が次々に軌道を描く。どこまでも飛んでいけ。タイムマシンのように。懐かしい場所へ、僕を連れてゆけ。

いつもの駅に降り着いた。みんな、帰っていく。ひとりでに動く足が階段を下る。電子音を響かせて改札を抜ける。見上げた空に、傾いた半月が光る。割れたクッキーのように笑いかける。

あの星が見えた。南の空に揺れる星。それは十字架の足元。正確な四角形を象っている。星座早見盤をくるりと回してみても、さっきの星の名前はわからないまま。

すべての音と声を遠くに追いやりながら、忘年会の夜を忘れられない夜にした星たち。

思い出したいつかの言葉。

僕はきっと、ほんとうのさいわいを探します。

また明日。