あ。
朝。出勤前。
資料を探している。
本棚の一番下の段にしまってあったはずなんだけど、なかなか見当たらない。たしかクリアファイルに挟んであって。なぜ出がけに探し始めるのか。気になると解消されるまで気が済まないたちなのだ。
あ。
シン・ゴジラのパンフレットだ。
パラパラと、逆から読み始める。スタッフ一覧。スタッフのインタビュー。庵野監督のコメント。キャストのインタビュー。
あ。
気がつくと出勤の時間だ。時計が僕を叱る。
電車には間に合った。スマホをいじったり、お気に入りの音楽を聴いたり。
江國香織さんの短編集を読む。もうそろそろ読み終わる。名残惜しくなって来る頃。
あ。
もう降りる駅だ。電車が空になっている。
今日の仕事は急な残業がやってきて、長引いている。
あ。
もう20時だ。前の職場ではこんな時間でもなんてことなかったのに。ストレスがたまっていることに気がつく。
すっかり暗くなった街を、特急電車の中から眺める。街灯の明かりが流星のように通りすぎる。この景色がどうしても宇宙にしか見えなくなってきて、銀河鉄道になるとこんな感じなんだろうと妄想する。
半年後には試験も迫っている。春には30歳も目前になる。
いつまでもこのままでいいのだろうか。
いいよ。という自分。
よくない。という自分。
未来にタイムマシンがあるなら、アドバイスでもしてくれたらいいのに。お人好しな僕。
あ。
今日はご飯を炊かなければ。
あ。
降りる駅を降り過ごした。
まだ降りたことのない駅に降りて、新しい景色を見て、知らない場所を歩く。回り道を楽しむ余裕くらいあってもいいかな。と思った。