まじめ道楽

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耳コピコード進行解説『スマイルブーケでた〜まや〜!』ハロー、ハッピーワールド !(バンドリ!)

バンドリ!ガールズバンドパーティ」より、ハロー、ハッピーワールド !の『スマイルブーケでた〜まや〜!』の耳コピコード進行です。

 

イベント『夏の宵、水面たゆたう詩と花』が素晴らしかったですね……。ハロハピの、現時点での到達点を見た気がします。読んだ当時はあまりの感動に何も言葉にできませんでしたが、落ち着いて整理ができた頃には、語りたいことがたくさんでてきました。今回はそれは置いておいて……コード進行解説に行きます。

今回のイベントストーリー楽曲『スマイルブーケでた〜まや〜!』は面白い進行があり、私個人の勝手な解釈ですが、ストーリーの中で言及されていたことに重なるのではないかと思いました。

さっそく行きましょう。

 

『スマイルブーケでた〜まや〜!』

歌:ハロー、ハッピーワールド!

作詞:織田あすかElements Garden

作曲:藤田淳平Elements Garden

(2019年)

 

※以下のコードはあくまでも私個人の聴き取りによるものなので、正確さや細かなニュアンスに欠ける部分があります。ご了承ください。

 

Key:G→E→C#

◇イントロ

CM7|DIEm|Bm|CM7|D|Em|Bm|Em|D

 

◇Aメロ(お鼻をくすぐる〜)

G C|D G|Em Bm|D G

CM7|B7|Em|Dsus4 D

G C|D G|Em|B7

Em|D|B♭dim|B7

 

◇Bメロ(また一つと増えていくね〜)

A|Am|D#dim G#|C#m

F#m|G#m|Am|Am|F#m|F#m

Bsus4|B|Bsus4|B

 

◇サビ(イェーイと咲いた〜)

C#|F#|G# F|A#m

D#m|Fm|F# D#|G#sus4 G#

C#|F#|Fm F|A#m

F# F#m|Fm A#m|A#m C#aug/A|C#/G# D#|

G# A#|C#

 

◇間奏

CM7|DIBm|Em|CM7|D|Em|Bm|Em|D|

 

◎この曲は、1番のサビが終わるまでに2回、曲の雰囲気が変わります。Aメロ、Bメロ、サビで曲のメインの調が変化します。前回の『1000回潤んだ空』と同じ展開ですが、今回の曲の転調は、一定の間隔が保たれて行われています。全体を通して解説していきます。

まずは、イントロから。独特の雰囲気を感じた方が多いかもしれません。いつものハロハピ楽曲とは少し違い、曲の雰囲気に切なさを感じるのではないかなぁと思います。

これはCM7というコード自体がまずシャレオツなコードで、これを単体で弾いただけでもエモいです。G調(ト長調)の中でⅣ(4つ目)の和音。ド-ミ-ソ-シは、ドとシが半音隣の音で一緒に弾くとひどく濁って聞こえる不協和音なのですが、ドからミとソを距離を経て、隣同士にならない上のシを弾くと、不協和な音を出していることに変わりはないのですが、違和感の少ない、絶妙に混ざり合った和音になり、それが切なさを演出しているようです。

また、音楽が作られる上で伴奏、コードは目的を持って並べられています。一番意識されるのは「終止感」です。「ここのフレーズ、パートは一旦ここで終わりますよ」、「この曲はこの流れで落ち着くように持っていきましょう」という結びと終わりがあり、曲の中で組み立てられるコード進行によって、曲の刺激と心地よさを演出しています。たとえば音楽の授業で聞いたことがあるかもしれませんが、先生が「起立、礼、着席」と挨拶する時に、ピアノをジャーンジャーンジャーンと三回和音を弾きます。あれはドミソ→ソシレファ→ドミソという和音を弾いていて、コード名はC→G7→Cになります。3つ目のCを聞いた時に「ここで終わりですよ」という曲の終わりの合図のような、ストンと落ち着くような感覚を抱いたならば、それが「終止感」です。終わりの和音、ここではCに向かうための導入の役割を、G7のコードが担っています。

◎この「終止感」を踏まえた上で、この曲で一番特徴的なのは2回行われる転調です。

転調する調はG→E→C#と書きましたが、AメロのGと、BメロのEの終止は、GとEで感じられるようにはなっていないようなのです。どこに終止感を持ってきているのかというと、イントロとAメロのG調(ト長調)はEm(ホ短調)で終止するように演奏されます。ト長調ホ短調は仲間の調で、どちらも使う音の場所、つまり音階はほぼ同じなんです。この調の関係を平行調と言います。ですが、Gの和音(ソシレ)で終わるのかEmの和音(ミソシ)で終わるのかによって、曲の印象は変わります。わかりやすく例えると、ト長調の終わりは開放的で、明るい結末を迎えるような終止感。ホ短調は、どこか切なくてドラマチックな印象を与える終止感があります。これは和音の印象なので、一概に決められるものではありませんが、和音を聞いた時に人が感じやすい印象の話になります。

この曲ではイントロとAメロはEmへ終止。BメロはE調(ホ長調)ですが、平行調C#m調(嬰ハ短調)で終止するように演奏されます。これらがこの曲の印象を切なく、ドラマチックな雰囲気にさせている理由ではないかなと思います。普段のハロハピの、ハチャメチャに明るくて楽しい曲調とは違う印象を受けると思います。

※ここまでの解説、説明が難しくてわからん!!という方は、すっ飛ばして下の方へスクロールしていただいて、鍵盤の画像を見ていただくとわかりやすいかもしれません!

(行われている転調は、和音の真ん中の音がたった一音変わるだけで、曲の雰囲気をガラッと変える効果的な方法です。それが、AメロからBメロ、Bメロからサビに至る2回行われているということ。これが今回のイベストに絡んでいるのでは?という解釈です)

詳細を知りたい方はこのまま読み進めて下さい。

◎長くなりましたね……大変ですが、これらのことを踏まえて、この転調の特徴を解説します。

まずAメロからBメロへの転調、G→Eへ調が変わります(この曲ではEm→C#mという終止感を持つ調での転調になります)。転調の繋ぎは、赤字のB7が行なっています。このB7がどんな役割を担っているかというと、AメロのEm調の中で、Emに終止させるかCに向かう導入の役割を持っています。B7が登場したら、何事もなければ通常、次はEmかCたどり着きたいところなんです。しかし、曲はBメロに移り、なおかつC#m調へ転調します。唐突な変化でB7が困ってしまいますが、曲は滑らかに繋がれます。これは、B7が転調後のE調の中でⅤ(5番目)の和音となり、次にⅠやⅣ、Ⅵのコードへと繋ぐ役割を持ちます。つまり、G調から平行調で演奏されるEm調が、BメロでE調になり、その平行調C#mとして演奏されています。その繋ぎを赤字のB7が行なっているので、自然な繋がりに感じられます。

◎そして、AメロからBメロへの転調とほぼ同じ形で、Bメロからサビへの転調も行われています。BメロのE調が平行調C#m調として演奏され、サビでC#調へ転調します(C#mとC#の関係を同主調と言います)。少し違うのは、サビでの終止感はC#(嬰ハ長調)にあるということです。コード名に「m」がついているのは「マイナー」と呼び、「短調」という意味です。サビではC#調はC#調のまま、明るいメジャーな終止感で奏でられます。サビの開放感はこの調で演出されているわけです。

そして、Bメロとサビの繋ぎを、ここでも同じ赤字のBが繋いでいるのが面白いです。このBは、サビのC#調では出てこない(この調の構成音ではない)のですが、以前もコード進行解説に書きましたⅥ♭→Ⅶ♭→(転調後)→Ⅰへと繋ぐ進行です。

◎まとめますと、G(Em)→E(C#m)→C# となります。

主調(G)の平行調(Em) の同主調(E)の平行調(C#m)の同主調(C#)に転調しています(ややこしい)。一言で言うとエモい。

ここでは同主調というのが重要で、同主調とは長調短調かの違いです。メジャーかマイナーか。では、その違いはどこで変えられるのかというと、和音の真ん中の音です。ドミソでいうとミの音です。このミの音が、半音下がってミ♭になると短調の響きになります。ミのままだと長調の響きになります。たった一つ半音ずれるだけで転調が行われていることになります。

下の鍵盤の画像にマークをしました。1枚目の緑マーカーをした和音がEm。2枚目がEです。真ん中の音が半音上がっていますね。

3枚目のオレンジマーカーをした和音がC#mです。Eの平行調です。4枚目がC#です。同様に真ん中の音が半音上がっていますね。この変化が同主調で転調している動きになります。

○Em(イントロ、Aメロの短調)

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○E(Bメロの長調、Emの同主調)
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C#m(Bメロの短調、Eの平行調)
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C#(サビの主調、C#mの同主調)

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そして、この転調を違和感なく繋いでいるのはどちらもBのコードということでした。

あと、サビの緑文字はクリシェです(それだけですごめんなさい許して)。

 

◎イベストでの解釈

大変長く複雑になりました……(私もちゃんと説明ができているのか、伝わっているのかわからなくて申し訳ないですが)。これらのことをまるっと含めて、ストーリーと絡めた解釈をすると、ハロハピのストーリーで時折語られる「視点が変わると物事の見え方も感じ方も変わる」という考えに沿うようなコード進行だったのではと感じました。

今回のイベントでは瀬田薫が以上のことを話してますし、奥沢美咲や弦巻こころもハロハピの活動を通して、このような感想を抱く場面がありました。どんな状況も、毎日繰り返される日々も、自分の心の持ち方次第で景色や感じ方はいかようにも変化する。楽しいことが起こるのを待つのではなくて、自分から楽しもうとする、楽しいことを探していく。そんな視点の切り替えが、現実をどんな景色にも変えていける。ハロハピの活動はそんなことに気づかせてくれることが多かったように思います。『スマイルブーケでた〜まや〜!』のコード進行も、和音のたった一つの音が変わるだけで、曲の雰囲気を変えることができます。曲調が変われば、曲の印象もガラッと変わります。特に短調長調の変化はわかりやすく、サビでの明るさは際立って感じられるのではないかなと思います。

作曲をされた方が、どこまでストーリーを汲み取った曲の構成にしたのかはわかりませんが、もし意図されているものだとしたら面白いなぁと思っての解説でした。

文字で説明するのが難しく、わかりづらい解説になってしまっていたら申し訳ありません。コメントで質問などありましたら、できる限りお答えできたらと思っています。

今回は以上です。

ここまで読んでくださってありがとうございました!