まじめ道楽

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小説『二十世紀電氣目録』感想

あらすじを読んで、物語のテーマにとても惹かれるものがあったので読みました。

時代の移り変わり。

舞台は明治時代の日本。

電気の発明により、技術に革新的な変化が起き、電気を動力にした製品が数多く作られ、人々の生活がこれからどんどん便利になるのではないかと囁かれ始めた頃。

神仏など、どんなものでもたやすく信じてしまう少女。「これからは電気世紀だ!」と謳い、人のために便利な電気製品を作って、電気で極楽浄土を作るという夢をもつ少年。

まるでドラえもんひみつ道具のような、未来への夢が詰まった電気製品を20個書き記したのが「電氣目録」。

とある秘密の記述が書かれているという電氣目録を巡るミステリーと、この2人の恋物語でもあるが、考え方の違いから喧嘩したり、寄り添ったり。

その様子がとても眩しく、瑞々しい。

 

見えないものを信じること。

目に見えない神様を信じることと、同じく動力源の見えない電気を信じることにどんな違いがあるだろうか。

そんな問いが、小説の中で度々、会話に登場します。

 

テクノロジーが発達して、科学を信仰し、人が得たものと失ったものはなんだろうか。

新しい時代が始まるという期待感と、それによってなくなっていくものが同居する時代の変わり目に、人の心はどんな風に変化するのか…こういう話に弱いです…。

実際、当時の日本はどうだったのか。興味があるのですがまだ勉強できてません。

ともすると時代錯誤と言われそうなテーマの小説ですが、今の私たちにも通じるものがあるんじゃないかなぁと思います。

 

これから迎える2020年。

東京オリンピックと共に、特に東京の街は大きく変化するでしょう。

自動運転の自動車が街を走るだろうとか。

AIが人間の代わりに仕事をこなし、人の労働負担はさらに減るだろうとか。

VR空間で会議を行ったりなど。

先のことを考えても、本当に何が起こるかなんて誰にもわからないので心配してもしょうがないのですが。

目に見えるものしか信じないというのはもっともらしいですが、実は隙があって。こうして操作しているスマートフォンだって、中で何が起きているかは直接見たことがないのに、ボタンを押せばアプリが起動する。何故かはわからないけど電話で話すことができる。と、信じているわけですよね。

はたまた、空気も、この心臓も直接目に見えないのに、呼吸して生きているわけですから、信じる対象というのは、信じる気持ちがあればなんだっていいと思います。

同時に、自分が本当にわかっていることなんてごくわずかで、神秘としか言いようのないものばかりなんじゃないかと思ったり。わからないもののために学問があり、わからないから学んでいるんでしょうけれど。わからないものをわからないと放っておいても、あとでわかる時が来るから、今調べて無理にわかる必要なんてない。なんて思ったりもします。

 

どうやら京都アニメーションでアニメ化がされるそうなので、とても楽しみにしています。興味がある方はぜひ。

 

小説の中に、日本の文化を感じる衣類や生活品が多く登場したので、あらためていろいろ調べながら読み進めました。その中の一つ、「水口細工」。

「幻の葛細工」が消えた意外な理由(田中淳夫) - 個人 - Yahoo!ニュース